コラム
column
column
腸内フローラとは腸内細菌の集まった状態のことで、腸内細菌叢ともいいます。
ここ数年健康に関する情報によく出てきます。
人間の体にはおよそ100兆個の微生物(主に細菌)が存在していてそのうちの大多数が腸内細菌(マイクロバイオータ)です。種類も数百種類あり、その菌種のバランスも人によってさまざまです。これらのバランスがアレルギーやがん、慢性の腸炎、肥満傾向など、さまざまな影響を及ぼすことがわかってきています。
腸内細菌は3つに大別され、それぞれの役割としては、善玉菌は病原菌などの定着を防御、免疫系の活性化、ビタミンの産生、悪玉菌は腸内にあるものの腐敗、細菌毒素の産生、発がん物質やガスの発生をひきおこします。その他に働きがどっちつかずの日和見菌というものも存在します。
最近では腸内細菌の割合などを調べる腸内フローラ検査キットなるものも存在しています。
自分の腸内細菌の状態を知るのも面白いのではないでしょうか。
腸内フローラは下痢や大腸洗浄(大腸内視鏡の前処置など)で一旦はガラッと変化しますが、その後も日々の生活習慣、食習慣が変わらなければかなりの部分が元にもどってしまいます。
しかし、これらの腸内フローラを人為的にコントロールして治療につなげるという方法が近年注目されています。
便移植、別名腸内細菌叢移植 Fecal microbiota transplant (FMT)です。抗生物質で既存の腸内細菌を減らし、他の人の便(腸内細菌)を移植するというものです。ある種の難治性感染性腸炎に対し欧米では実用化されています。
潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患などにも効果があるといわれ、日本ではまだ研究段階ですが新しい治療法として有望視されています。
おそらく将来的には便そのものを移植しなくても、整理された腸内環境にバランスのとれた腸内細菌を経口で投与することも可能になると思われます。
ノーベル賞で話題になったがん治療薬オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の効果は腸内フローラの影響を受けるという報告もあり、今後ますます注目の分野と言えそうです。
この先この研究が進めば、がんの分野だけでなく多くの人が悩まされている花粉症やアトピー性皮膚炎、糖尿病に肥満まで、さまざまな疾患の根本的治療がみつかるかもしれません。